心理学実験に参加してくれるのはどんな人か?
この記事を最後まで読むと、あなたがナルシシストかどうかがわかる…かもしれません(^^
実験心理学をやっていて非常に重要なのが被験者を集めることです。
自分がいくらがんばって研究しようと思っていても、被験者さんからデータをいただかないと、全然さきに進みません。
多くの研究者が、被験者集めのために日々、ひいこら言っているわけです。
私がこのブログをやっているのも、被験者になってくださるかたを募集するためです。
このブログに訪れた方の全てが実験に参加してくださるわけではありませんが、そこそこの人数の参加が得られつつあります。
この記事を書いている今現在も、ぽっつらぽっつらデータが届いています。
ありがたいことです。
心理学
実験
被験者
募集
こんな単語をキーワードにしてgoogleで検索すると、東大文学部サーバー上の私のページがトップで出てきちゃいましたが、他にも心理学実験の被験者を募集しているページが多数ヒットしますね。中には、実験に参加すると報酬が出るものもあります。
いまのところ、私の実験に一般の方が参加しても、なんのメリットもありません。
報酬を出すことも可能なのですが、事前に被験者さんの名前を文学部事務に通達して、実験に参加したら「出勤簿」に押印していただいて、銀行口座を届け出ると、時給にして925円くらい振り込んでもらえる、という仕組みがあります(履歴書の提出は必要だったかな?)。私の実験の所要時間がだいたい10分前後ですから925円を割ると…報酬欲しいですか?
さまざまな裏技があることも知っていますが、研究費を適正に使用する義務がありますのでちょっとそれは採用できません。
というわけで、
実験心理学の(わずかな)進歩のためならば、10分程度の時間を提供してあげてもいいよ、という方の善意にすがっているのが現状です。
まあ、被験者の大半を占める学生さん(私の授業をとっている人)の場合は、ちょっと事情が違って、完全なボランティアじゃないですけどね。
それはさておき、
心理学実験の被験者として御協力くださるのは、一体どのような方々なのでしょうか?
この問題について研究したPaganらの論文を、PsyBlogが紹介していたのを、MindHacksが紹介していました(^^;
これじゃ又聞きもいいところなので、もとの論文をダウンロードして斜め読みしてみました。掲載誌はPersonality and Individual Differencesだそうで、パーソナリティ研究の論文が載るジャーナルみたいですね。パーソナリティ研究は、私にはまるで専門外なので、論文の内容がいまいち理解できていません。なので、以下、あまり信用しないで読んでください。
Pagan達は、大学の学生寮で生活している大学一年生に、2週間後の心理学実験に参加してくれるようにお願いしました。すると、2週間後、大体の学生さんは実験に参加してくれたのですが、一部の学生さんは、よくわからない理由で実験場所に姿を現しませんでした。実際の分析対象になったのは、実験に参加してくれた人が1442名、参加してくれなかった人が238名。
で、実験で何をやったかというと、peer-reportとかpeer-nominationとかいうらしいんですけれど、この学生寮にいる知り合いで、病的なパーソナリティの傾向を示したと思われる人を、指名する、というものだそうです。ようするに、53号室のxxってやつはちょっとナルシーだ、とか、ヒステリーを起こしやすいやつだ、とかいうように、お互いにチクり合うわけです(^^;
すると、実験当日に参加した人がそういう指名を受ける場合もあれば、実験に来なかった人が指名を受ける場合も出てきます。このため、実験に来た人も来なかった人も、そのパーソナリティを推定することが可能になります。面白いですね。この業界ではよく知られた研究方法なんでしょうか?
で、結果です。
実験に参加した人たちの中には、参加しなかった人に比べ、次のような人が高い割合で含まれていたそうです。
histrionic, obsessive-compulsive, self-sacrificing, and intrusive/needy characteristics.
なるほどー。
いや、全然わかりませんな(^^;
自己犠牲的 self-sacrificingってのは分かります。わざわざ時間を割いて実験に参加してくれるわけですから。
一方、実験に参加しなかった人の中には、ナルシシストで積極性の低い人が多く含まれていたのだそうですよ。
ここで注意して欲しいのは、
心理学実験に参加しない人=ナルシシズム傾向がある人
という断定的なことが言える訳ではないということです。
心理学実験に参加してくれる人にもナルシシストは含まれます。逆に、心理学実験に参加してくれない人の中にも、ナルシシストとは言えない人が含まれています。あくまでも、参加する人達の集団と、参加しない人たちの集団の中で、ナルシシストの割合を比較したら、集団間で差が出ましたよ、っていう結果なわけです。
この結果は、パーソナリティ研究をしている人にとっては、かなり嫌なものだはず。
例えば、ある実験を行ったところ、ナルシシズム傾向を示す被験者がxx%の割合で含まれていた、というような結果が得られたとしても、ナルシーな方はもともと実験にはあまり参加してくれないわけですから、そのような割合は、ナルシシズム傾向を示す人の実際の割合を、過小評価している可能性が高いと言えます。
で、MindHacksでも指摘されてましたが、パーソナリティ研究が目的でなく、私がやっているような視知覚や視覚認知の研究の場合、Paganらの得た知見がどのように影響するのか、よくわかりません。ナルシーな被験者の割合が低いと、結論に何か影響を及ぼすでしょうか?それとも全然関係ないでしょうか?
被験者のパーソナリティ、と言って良いのかどうかわかりませんが、個々人の持っている特質の違いが、視覚認知実験に影響を及ぼす可能性はあります。
Mathewsらの研究がそれを示しています。
Mathewsらが調べたのは、ナルシシズム傾向ではなく、不安傾向(特性不安)なんですが、不安な人は恐怖表情が示す視線方向に、注意を向けやすくなるそうです。
といわれても何が何だかわからないと思いますが、あっち向いてホイ、みたいな実験があるんですよ。いや、あっち向いてホイとはちょっと違うかな?
まあそれはともかく、実験では、パソコンの画面に、右か左かどっちかを見ている人物の顔が表示されるんですね。で、このとき、顔の右または左のどっちかに、例えば*マークみたいなものが出現します。これをターゲットと呼びます。
ターゲットは、顔が見ている方に出ることもあれば、見ていない方に出ていることもあるんですが、被験者さんは、顔がどっちを見ているかは無視して、ターゲットが出現したらできるだけ素早くボタンを押す様に指示されています。そして、どのくらい素早く押せるか、その反応時間を測定しておきます。


そうすると、顔がどっちを見ているかは無視してね、と指示されているにもかかわらず、顔が見ている方向にターゲットが出現すると、ボタンを素早く押すことができて、反対に、顔が見ていない方向にターゲットが出現すると、ボタンを押すのが少し遅くなります。
このような現象は繰り返し報告されていて、誰かが見ている方向に、我々は自動的に注意を向けてしまうんだ、誰かが見ている方向が気になってしょうがないんだ、というように解釈されています。
で、ですよ。
Mathewsらは、顔が恐怖の表情を示している場合と、真顔(中性表情)の場合でこの効果に違いがあるかを調べたんですね。
そしたら…違いはありませんでした(^^

でも、STAIという尺度を使って、被験者さんの(特性)不安というものの程度を調べ、不安の強い被験者と弱い被験者とでデータを分けて実験結果を分析しなおしてみました。
すると、不安の強い被験者は、恐怖表情が見ている方向がすごく気になってしまうけれど、真顔だとそうでもない、という事がわかりました。逆に、不安の弱い被験者では、恐怖表情だろうが真顔だろうが、見ている方向が気になる程度はあまり変わらない、という事がわかりましたとさ。
とまあ、こんなこともあるくらいだから、もしかすると…被験者にナルシーな方が少ない、という事が、視覚認知の実験結果になんらかの影響を及ぼしている可能性はありそうですねえ。
いやですねえ。
というところでこの話はおしまい。
なにをこんなに長々と書いているのか、私は。
このネタ、そのまんま授業で話したら一コマくらいつぶせそうですね。
さて、ここまで読んだあなたはこの後どうするでしょうか?
1)私が実施している心理学実験に参加する
2)実験には参加しない
さあどっちだ?
Pagan, J. L., Eaton, N. R., Turkheimer, E., & Oltmanns, T. F. (2006). Peer-reported personality problems of research nonparticipants: Are our samples biased? Personality and Individual Differences, 41, 1131-1142.
Mathews, A., Fox, E., Yiend, J., & Calder, A. (2003). The face of fear: Effects of eye gaze and emotion on visual attention. Visual Cognition, 10(7), 823-835.
実験心理学をやっていて非常に重要なのが被験者を集めることです。
自分がいくらがんばって研究しようと思っていても、被験者さんからデータをいただかないと、全然さきに進みません。
多くの研究者が、被験者集めのために日々、ひいこら言っているわけです。
私がこのブログをやっているのも、被験者になってくださるかたを募集するためです。
このブログに訪れた方の全てが実験に参加してくださるわけではありませんが、そこそこの人数の参加が得られつつあります。
この記事を書いている今現在も、ぽっつらぽっつらデータが届いています。
ありがたいことです。
心理学
実験
被験者
募集
こんな単語をキーワードにしてgoogleで検索すると、東大文学部サーバー上の私のページがトップで出てきちゃいましたが、他にも心理学実験の被験者を募集しているページが多数ヒットしますね。中には、実験に参加すると報酬が出るものもあります。
いまのところ、私の実験に一般の方が参加しても、なんのメリットもありません。
報酬を出すことも可能なのですが、事前に被験者さんの名前を文学部事務に通達して、実験に参加したら「出勤簿」に押印していただいて、銀行口座を届け出ると、時給にして925円くらい振り込んでもらえる、という仕組みがあります(履歴書の提出は必要だったかな?)。私の実験の所要時間がだいたい10分前後ですから925円を割ると…報酬欲しいですか?
さまざまな裏技があることも知っていますが、研究費を適正に使用する義務がありますのでちょっとそれは採用できません。
というわけで、
実験心理学の(わずかな)進歩のためならば、10分程度の時間を提供してあげてもいいよ、という方の善意にすがっているのが現状です。
まあ、被験者の大半を占める学生さん(私の授業をとっている人)の場合は、ちょっと事情が違って、完全なボランティアじゃないですけどね。
それはさておき、
心理学実験の被験者として御協力くださるのは、一体どのような方々なのでしょうか?
この問題について研究したPaganらの論文を、PsyBlogが紹介していたのを、MindHacksが紹介していました(^^;
これじゃ又聞きもいいところなので、もとの論文をダウンロードして斜め読みしてみました。掲載誌はPersonality and Individual Differencesだそうで、パーソナリティ研究の論文が載るジャーナルみたいですね。パーソナリティ研究は、私にはまるで専門外なので、論文の内容がいまいち理解できていません。なので、以下、あまり信用しないで読んでください。
Pagan達は、大学の学生寮で生活している大学一年生に、2週間後の心理学実験に参加してくれるようにお願いしました。すると、2週間後、大体の学生さんは実験に参加してくれたのですが、一部の学生さんは、よくわからない理由で実験場所に姿を現しませんでした。実際の分析対象になったのは、実験に参加してくれた人が1442名、参加してくれなかった人が238名。
で、実験で何をやったかというと、peer-reportとかpeer-nominationとかいうらしいんですけれど、この学生寮にいる知り合いで、病的なパーソナリティの傾向を示したと思われる人を、指名する、というものだそうです。ようするに、53号室のxxってやつはちょっとナルシーだ、とか、ヒステリーを起こしやすいやつだ、とかいうように、お互いにチクり合うわけです(^^;
すると、実験当日に参加した人がそういう指名を受ける場合もあれば、実験に来なかった人が指名を受ける場合も出てきます。このため、実験に来た人も来なかった人も、そのパーソナリティを推定することが可能になります。面白いですね。この業界ではよく知られた研究方法なんでしょうか?
で、結果です。
実験に参加した人たちの中には、参加しなかった人に比べ、次のような人が高い割合で含まれていたそうです。
histrionic, obsessive-compulsive, self-sacrificing, and intrusive/needy characteristics.
なるほどー。
いや、全然わかりませんな(^^;
自己犠牲的 self-sacrificingってのは分かります。わざわざ時間を割いて実験に参加してくれるわけですから。
一方、実験に参加しなかった人の中には、ナルシシストで積極性の低い人が多く含まれていたのだそうですよ。
ここで注意して欲しいのは、
心理学実験に参加しない人=ナルシシズム傾向がある人
という断定的なことが言える訳ではないということです。
心理学実験に参加してくれる人にもナルシシストは含まれます。逆に、心理学実験に参加してくれない人の中にも、ナルシシストとは言えない人が含まれています。あくまでも、参加する人達の集団と、参加しない人たちの集団の中で、ナルシシストの割合を比較したら、集団間で差が出ましたよ、っていう結果なわけです。
この結果は、パーソナリティ研究をしている人にとっては、かなり嫌なものだはず。
例えば、ある実験を行ったところ、ナルシシズム傾向を示す被験者がxx%の割合で含まれていた、というような結果が得られたとしても、ナルシーな方はもともと実験にはあまり参加してくれないわけですから、そのような割合は、ナルシシズム傾向を示す人の実際の割合を、過小評価している可能性が高いと言えます。
で、MindHacksでも指摘されてましたが、パーソナリティ研究が目的でなく、私がやっているような視知覚や視覚認知の研究の場合、Paganらの得た知見がどのように影響するのか、よくわかりません。ナルシーな被験者の割合が低いと、結論に何か影響を及ぼすでしょうか?それとも全然関係ないでしょうか?
被験者のパーソナリティ、と言って良いのかどうかわかりませんが、個々人の持っている特質の違いが、視覚認知実験に影響を及ぼす可能性はあります。
Mathewsらの研究がそれを示しています。
Mathewsらが調べたのは、ナルシシズム傾向ではなく、不安傾向(特性不安)なんですが、不安な人は恐怖表情が示す視線方向に、注意を向けやすくなるそうです。
といわれても何が何だかわからないと思いますが、あっち向いてホイ、みたいな実験があるんですよ。いや、あっち向いてホイとはちょっと違うかな?
まあそれはともかく、実験では、パソコンの画面に、右か左かどっちかを見ている人物の顔が表示されるんですね。で、このとき、顔の右または左のどっちかに、例えば*マークみたいなものが出現します。これをターゲットと呼びます。
ターゲットは、顔が見ている方に出ることもあれば、見ていない方に出ていることもあるんですが、被験者さんは、顔がどっちを見ているかは無視して、ターゲットが出現したらできるだけ素早くボタンを押す様に指示されています。そして、どのくらい素早く押せるか、その反応時間を測定しておきます。


そうすると、顔がどっちを見ているかは無視してね、と指示されているにもかかわらず、顔が見ている方向にターゲットが出現すると、ボタンを素早く押すことができて、反対に、顔が見ていない方向にターゲットが出現すると、ボタンを押すのが少し遅くなります。
このような現象は繰り返し報告されていて、誰かが見ている方向に、我々は自動的に注意を向けてしまうんだ、誰かが見ている方向が気になってしょうがないんだ、というように解釈されています。
で、ですよ。
Mathewsらは、顔が恐怖の表情を示している場合と、真顔(中性表情)の場合でこの効果に違いがあるかを調べたんですね。
そしたら…違いはありませんでした(^^

でも、STAIという尺度を使って、被験者さんの(特性)不安というものの程度を調べ、不安の強い被験者と弱い被験者とでデータを分けて実験結果を分析しなおしてみました。
すると、不安の強い被験者は、恐怖表情が見ている方向がすごく気になってしまうけれど、真顔だとそうでもない、という事がわかりました。逆に、不安の弱い被験者では、恐怖表情だろうが真顔だろうが、見ている方向が気になる程度はあまり変わらない、という事がわかりましたとさ。
とまあ、こんなこともあるくらいだから、もしかすると…被験者にナルシーな方が少ない、という事が、視覚認知の実験結果になんらかの影響を及ぼしている可能性はありそうですねえ。
いやですねえ。
というところでこの話はおしまい。
なにをこんなに長々と書いているのか、私は。
このネタ、そのまんま授業で話したら一コマくらいつぶせそうですね。
さて、ここまで読んだあなたはこの後どうするでしょうか?
1)私が実施している心理学実験に参加する
2)実験には参加しない
さあどっちだ?
Pagan, J. L., Eaton, N. R., Turkheimer, E., & Oltmanns, T. F. (2006). Peer-reported personality problems of research nonparticipants: Are our samples biased? Personality and Individual Differences, 41, 1131-1142.
Mathews, A., Fox, E., Yiend, J., & Calder, A. (2003). The face of fear: Effects of eye gaze and emotion on visual attention. Visual Cognition, 10(7), 823-835.
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