2007/09/29

不気味の谷 (1)

「不気味の谷」という、なんだかインパクトのある言葉があります。
ロボットがどんどん人間に似ていくと、それを見た人間はどう感じるだろうか?ということに関する仮説のことです。
元々、ロボット工学者の、森・メカモ・政弘先生が考えた仮説ですが、uncanny valleyという英訳がほぼ定着していて、国内外で広く知られるようになりました。

Mori function

森先生は、不気味の谷を説明するために、上にあるようなグラフを使いました。
横軸は、ロボットや人形などの人工物が、人間にどのくらい似ているかを表しています。
左端の方はあんまり人間に似ていないもの、例えば産業用ロボットなんかが位置付けられます。
右にいくにつれてどんどん人間に似てきて、ホンダのアシモみたいな人間型(ヒューマノイド)ロボットが出てきます。リカちゃん人形なんかも、横軸の真ん中あたりに位置することになるのかな?
さらに右にいくと人間との類似性が高まっていって、右端の部分では完全に人間と区別できなくなります。いわゆるアンドロイドですね。

縦軸は、そういった人工物を見たときに、人間が感じる印象を量的に表しています。
森先生の話の中では「親和感」という言葉が使われていましたが、要するに、縦軸の上の方に行くほど好印象(かっこいい、綺麗、魅力的 etc.)になって、真ん中あたりだと、どうということのない中性的印象、下の方に行くと、悪い印象(かっこわるい、異様、不気味 etc.)になる、というように理解しておけばいいと思います。

ではこのグラフは何を意味しているのか?
森先生の仮説だと、人間との類似性が極端に低い人工物に対しては、中性的な、どうでもいい印象しか抱かないんだけれど、人間に似てくるにつれて印象がどんどん良くなっていく、ということになります。
グラフでも、左端から見ていくと右上がりのグラフになっていますね。
実際、産業用ロボットよりも、ホンダのアシモだとか、アニメに出てくる人型ロボットの方が好きだ、と感じる人が多いんではないでしょうか。

しかし、えーと、ここが一番重要なんですが、人間との類似性がさらに高まっていくと、我々人間はそのような人工物に対して、嫌悪感を感じるだろう、というんですね。
そのため、グラフでは、人間との類似性がかなり高まったところで、すとーん!と落っこちています。

で、更に人間との類似性を高めて、人間と全く区別がつかないレベルに近づいていくと、また印象が回復して、最終的に最高レベルに達する。

そういう話を視覚的に表したのが上のグラフです。
基本的に右上がりのグラフなんだけれど、横軸の右の方で谷ができることになります。
この谷の部分が「不気味の谷」です。

ここで注意していただきたいのですが、
ロボット工学者である森先生が提唱したこの仮説、実は「ロボットについての」仮説ではないんですね。
ロボットを観察した「人間の反応についての」仮説なんです。
で、何かを見たときの人間の反応を研究する学問領域があって、世間では「心理学」なんて呼ばれています。
つまり、不気味の谷仮説は、心理学の仮説ってことです。

で、
よく考えたら、自分、心理学者じゃないですか。
じゃあ、この不気味の谷仮説をテーマにちょいと実験でもやってみようかな、と思ったんですね。

不気味の谷(2)に続く


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Author:瀬山淳一郎
とある大学の心理学研究室のすみっこで実験心理学の研究をしている一児の父です。インターネット上で、あまり心理学っぽくない心理実験をやっています。ちょっとした空き時間(数分程度)のあるときに実験に参加していただけると助かります。下のアイコンをクリックすると、実験のページが開きます。

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