こどもを褒めるための二つの方法

(ルリタテハ. 沖縄県宜野湾市. 2007年6月)
こどもがお絵かきをしたとき、描かれたものがうまかろうが下手だろうが、とりあえず褒めるのが親バカの基本ですが…どうやって褒めてます?
スタンフォード大学のCimpianたちは、
a) You are a good drawer.
b) You did a good job drawing.
という2種類の褒め方が、子供のやる気にどう影響するかを調べています。
この2種類の褒め方、日本語ネイティブの私からすると、そんなに違いがあるように思えません。しかし、英語ネイティブの人にとっても、違いは微妙な様で。
ニュアンスとしては、
a) お絵かき上手ね〜
b) これは上手にかけたわね〜
てな感じでしょうか。
Cimpianたちは、4歳児を被験者として、お絵かきごっこをしてもらいました。
実際に絵を描いてもらうわけではありません。
4歳児と実験者がそれぞれお人形を使って、お絵かきをしている場面を演じるんですね。
実験者が使う人形が先生役です。
ちなみに、うちの娘も4歳です(^^
まず、
お絵かきが上手にできた、というシナリオを演じてもらいます。
このとき、先生役の実験者が褒め言葉を言うのですが、半数の被験者には、
You are a good drawer(お絵かき上手ね〜)
残り半数の被験者には、
You did a good job drawing(これは上手にかけたわね〜)
と言いました。
そして、
お絵かきが楽しかったかどうか、またお絵かきをしたいかどうか、といった質問をして、子供のやる気を評定します。
その結果、
褒め言葉の違いは、子供のやる気にほとんど影響しませんでした。
その後、
お絵かきが上手にできなかったというシナリオを演じてもらいます。
猫の耳やバスのタイヤを描き忘れた、という設定です。
実験者は、耳やタイヤが欠けていることを子供に指摘します。
ここで、もう一度、子供のやる気を評定します。
すると、最初の成功シナリオで使った褒め言葉の影響が現れました。
You did a good job drawing(これは上手にかけたわね〜)
というほめ方をした子供に比べると、
You are a good drawer(お絵かき上手ね〜)
というほめ方をした子供は、やる気を失ったような回答をしてきました。
「猫の耳やバスのタイヤが欠けていたけど、どうしたらいい?」
という質問に対して、耳やタイヤを付け足せばいい、というような前向きの回答が多かったのは、
You did a good job drawing(これは上手にかけたわね〜)
というほめかたをした子供。
You are a good drawer(お絵かき上手ね〜)
というほめ方をした子供は、比較的強い情緒的反応(「上手にかけなかったから泣いちゃう」)を示して、「もうやりたくな〜い」。
どちらの褒め言葉も、基本的には言ってることは同じに感じられますが、こんな微妙な違いが子供のやる気に影響するというのは驚きです。
論文に書いてあった結果の解釈の方、いまいち分かりづらかったので、以下は私の超訳です(^^;
You did a good job drawing(これは上手にかけたわね〜)
という褒め方は、あくまでも「今回は」上手にできた、という言い方になっています。
これに対して、
You are a good drawer(お絵かき上手ね〜)
という褒め方はもっと一般的な言い方で、子供が持っている能力に直接言及しています。
このため、今回のお絵かきが上手にできたのは、たまたま上手にできたのではなく、自分の能力をきっちり反映してそうなったのだ、と解釈する傾向が高まる、と仮定してみましょう。
これは、子供の自尊心を高める効果がありそうな気もしますが、失敗場面では、この解釈傾向が足を引っ張ります。
失敗した(猫の耳やバスのタイヤが欠けていた)のは、たまたまそうなったのではなく、自分の能力を反映してそうなったのだ、という解釈を子供がしてしまう。
つまり、自分がダメだから絵もダメだった、というわけです。
猫の耳やバスのタイヤが欠けている、という先生の指摘を、自分の能力が劣っていることに対する批判と解釈したら、それはずいぶんと子供のやる気を削ぐことでしょう。
以上、超訳おわり。
まあ、社会心理学の論文ではときどき見かけるタイプの考え方ですね。
てことは、
「おまえは天才だ!なんだってできるんだ!」
みたいな、一般的な褒め方はしない方がいいんですかね?
あくまでも、「今回は」上手だったね、という褒め方がいいのかな?
ただ、この論文で報告している結果がどの程度一般化できるのかについては、慎重になる必要がありますね。
まず、自分と先生がいて、お絵かきをしている(実際にはお絵かきごっこ)という場面以外にも、同じような傾向が生じるのかどうか?
あとは、言語の問題ですね。
元論文にあった、
You are a good drawer.
You did a good job drawing.
を、今回は
お絵かき上手ね〜
これは上手にかけたわね〜
というように解釈しましたが、日本人の4歳児を対象に、日本語で褒めた場合にも、似たような傾向が得られるのかどうか?
言い回しの微妙な違いが大きく影響してくるとしたら、元論文で使っていた褒め方の日本語訳を十分に吟味しないと、全然違う結果が得られてしまうかもしれません。
誰か追試してくれませんかね?
Cimpian, A., Aree, H.-M. C., Markman, E. M., & Dweck, C. S. (2007).
Subtle linguistic cues affect children's motivation. Psychological Science, 18(4), 314-316.
[おねがい]
このブログで紹介している心理学的現象は、被験者さんたちの協力によって見出されてきたものばかりです。わたしも新現象発見のために、被験者を必要としています。自分がやらなくても誰かがやるから大丈夫でしょ、と思ったらそれは大間違い。
あなたの協力が必要なんです。下のアイコンをクリックすると実験内容を説明しているページが開きます。5分から10分程度の間、簡単なゲームのようなことをしていただいています。どうか御協力ください。

または東大文学部サーバーのページへどうぞ:http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~seyama/explist.html
[ランキング]
下のアイコンをクリックすると、このブログの順位が表示されます。ランキングで上位に表示されると、実験の宣伝になる可能性もありますが…果たして?


実際に絵を描いてもらうわけではありません。
4歳児と実験者がそれぞれお人形を使って、お絵かきをしている場面を演じるんですね。
実験者が使う人形が先生役です。
ちなみに、うちの娘も4歳です(^^
まず、
お絵かきが上手にできた、というシナリオを演じてもらいます。
このとき、先生役の実験者が褒め言葉を言うのですが、半数の被験者には、
You are a good drawer(お絵かき上手ね〜)
残り半数の被験者には、
You did a good job drawing(これは上手にかけたわね〜)
と言いました。
そして、
お絵かきが楽しかったかどうか、またお絵かきをしたいかどうか、といった質問をして、子供のやる気を評定します。
その結果、
褒め言葉の違いは、子供のやる気にほとんど影響しませんでした。
その後、
お絵かきが上手にできなかったというシナリオを演じてもらいます。
猫の耳やバスのタイヤを描き忘れた、という設定です。
実験者は、耳やタイヤが欠けていることを子供に指摘します。
ここで、もう一度、子供のやる気を評定します。
すると、最初の成功シナリオで使った褒め言葉の影響が現れました。
You did a good job drawing(これは上手にかけたわね〜)
というほめ方をした子供に比べると、
You are a good drawer(お絵かき上手ね〜)
というほめ方をした子供は、やる気を失ったような回答をしてきました。
「猫の耳やバスのタイヤが欠けていたけど、どうしたらいい?」
という質問に対して、耳やタイヤを付け足せばいい、というような前向きの回答が多かったのは、
You did a good job drawing(これは上手にかけたわね〜)
というほめかたをした子供。
You are a good drawer(お絵かき上手ね〜)
というほめ方をした子供は、比較的強い情緒的反応(「上手にかけなかったから泣いちゃう」)を示して、「もうやりたくな〜い」。
どちらの褒め言葉も、基本的には言ってることは同じに感じられますが、こんな微妙な違いが子供のやる気に影響するというのは驚きです。
論文に書いてあった結果の解釈の方、いまいち分かりづらかったので、以下は私の超訳です(^^;
You did a good job drawing(これは上手にかけたわね〜)
という褒め方は、あくまでも「今回は」上手にできた、という言い方になっています。
これに対して、
You are a good drawer(お絵かき上手ね〜)
という褒め方はもっと一般的な言い方で、子供が持っている能力に直接言及しています。
このため、今回のお絵かきが上手にできたのは、たまたま上手にできたのではなく、自分の能力をきっちり反映してそうなったのだ、と解釈する傾向が高まる、と仮定してみましょう。
これは、子供の自尊心を高める効果がありそうな気もしますが、失敗場面では、この解釈傾向が足を引っ張ります。
失敗した(猫の耳やバスのタイヤが欠けていた)のは、たまたまそうなったのではなく、自分の能力を反映してそうなったのだ、という解釈を子供がしてしまう。
つまり、自分がダメだから絵もダメだった、というわけです。
猫の耳やバスのタイヤが欠けている、という先生の指摘を、自分の能力が劣っていることに対する批判と解釈したら、それはずいぶんと子供のやる気を削ぐことでしょう。
以上、超訳おわり。
まあ、社会心理学の論文ではときどき見かけるタイプの考え方ですね。
てことは、
「おまえは天才だ!なんだってできるんだ!」
みたいな、一般的な褒め方はしない方がいいんですかね?
あくまでも、「今回は」上手だったね、という褒め方がいいのかな?
ただ、この論文で報告している結果がどの程度一般化できるのかについては、慎重になる必要がありますね。
まず、自分と先生がいて、お絵かきをしている(実際にはお絵かきごっこ)という場面以外にも、同じような傾向が生じるのかどうか?
あとは、言語の問題ですね。
元論文にあった、
You are a good drawer.
You did a good job drawing.
を、今回は
お絵かき上手ね〜
これは上手にかけたわね〜
というように解釈しましたが、日本人の4歳児を対象に、日本語で褒めた場合にも、似たような傾向が得られるのかどうか?
言い回しの微妙な違いが大きく影響してくるとしたら、元論文で使っていた褒め方の日本語訳を十分に吟味しないと、全然違う結果が得られてしまうかもしれません。
誰か追試してくれませんかね?
Cimpian, A., Aree, H.-M. C., Markman, E. M., & Dweck, C. S. (2007).
Subtle linguistic cues affect children's motivation. Psychological Science, 18(4), 314-316.
[おねがい]
このブログで紹介している心理学的現象は、被験者さんたちの協力によって見出されてきたものばかりです。わたしも新現象発見のために、被験者を必要としています。自分がやらなくても誰かがやるから大丈夫でしょ、と思ったらそれは大間違い。
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