2007/04/17

エラーバーから何が読み取れるか?

Cognitive Dailyの記事に、研究者の多くはエラーバーの意味をろくに理解していない、という話がありました(そもそもエラーバーって何だ?という方はこちらの記事をどうぞ。エクセルでエラーバーを表示する方法が知りたいという方はこちらへ。)。
どうやら私自身もエラーバーの意味を理解していないようだったので、記事の元になった論文と、そのまた元になった論文に目を通してみました。

確かに私はエラーバーの意味をろくに理解していなかったようです (^^;

error bar



例えば、上の様なグラフがあったとして、何が読み取れるか?
(WBからいきなり「ペガサス級」という言葉を連想してしまったあなたは1960年代生まれ?)

1)エラーバーが95%信頼区間を表しているとすると、その長さ(WAまたはWB)は、標準誤差のだいたい2倍(信頼区間=標本平均±t×標本標準誤差。自由度が10以上だとtがだいたい2なので)。

2)エラーバーが標準誤差だとしたら、それはおおざっぱにいって68%信頼区間と同じ。

3)95%信頼区間を表すエラーバーが、下の図のようにちょうど接していると、AとBの平均値の差が5%水準で有意、と言いたくなるが、実はそれは間違い。
エラーバーの接触


4)95%信頼区間を表すエラーバーWAとWBがだいたい同じ長さだとする。
このとき、エラーバーが半分くらい重なってしまっていると、AとBの平均値には有意な差が無いと思いたくなるかもしれない。
しかし、半分重なっている状態は、大ざっぱにいって5%水準で有意差あり。重なりが無い場合(エラーバーが接している場合)は、だいたい1%水準(0.6%水準)で有意差あり。

5)95%信頼区間を表すエラーバーWAとWBの長さが違う場合、両者の平均の長さをWとすると、Wの半分くらいエラーバーが重なってしまっていても、AとBは大ざっぱにいって5%水準で有意差あり。接していれば1%水準。
ただし、WAとWBの長さが倍以上違っていたり、サンプル数が10より少ないような場合には、このことは成り立たない。

6)エラーバーから条件間に差があるかないかを読み取れるのは、二つの平均値が独立なサンプルな場合、つまり被験者間要因の場合だけ。被験者内要因の場合、エラーバーから条件間の差についてなにも言えない。

エラーバーから何が読み取れるか、については次の論文で解説されています。
Cumming, G., & Finch, S. (2003). Inference by Eye: Confidence intervals and how to read pictures of data. American Psychologist, 60(2), 170-180.

また、心理学や医学の領域の研究者がエラーバーの意味をどれくらい理解しているかを調べたところ、「みーんな誤解していましたー!」という報告をしているのが次の論文です。
Belia, S., Fidler, F., Williams, J., & Cumming, G. (2005). Researchers misunderstand confidence intervals and standard error bars. Psychological Methods, 10(4), 389-396.

特に、95%信頼区間が重なっていなければ5%水準で有意、という誤解(上記の3)が広く信じ込まれてしまっているのだとか。
私も自分の論文のなかで、「95%信頼区間が重なっていなければ有意差ありと見なす」というようなことを書いてしまったことがあるので、この論文を読んだときはヒヤヒヤものでした。
でも、「5%水準で有意差ありと見なす」とは書かなかったので、一応セーフ (^^;

学会発表のときに、エラーバーとして95%信頼区間を示しておいて、「条件AとBが5%水準で有意差ありでした」、と主張したときに、「エラーバーが重なっているのになんで有意差ありなんですか?計算間違ってませんか?」という質問が出たら、その質問者も、エラーバーの意味を誤解している可能性があります。

やっぱ統計って難しいわ。

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Author:瀬山淳一郎
とある大学の心理学研究室のすみっこで実験心理学の研究をしている一児の父です。インターネット上で、あまり心理学っぽくない心理実験をやっています。ちょっとした空き時間(数分程度)のあるときに実験に参加していただけると助かります。下のアイコンをクリックすると、実験のページが開きます。

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