2006/11/22

金さえあれば愛はいらない

経済的に恵まれている人は、自立的に考え、行動するという。
他人に頼らないし、他人も誰かに頼らずに自力で生きていくべきだ、という価値観を持つ。

という傾向があるという。

しかし、Science誌に掲載されたVohsらの論文によると、心理実験に参加した被験者に、お金という概念を(非意図的に)思い出させただけで、自立的傾向が高まったという。本当にリッチでなくてもいい、ということ。
しかも、すごく単純な方法を使うだけで、劇的な効果が出たというのだからすごい。

どうやって被験者にお金概念を(非意図的に)思い出させたか?
お金と関係のある単語や文章を読ませたり、お金の画像が流れるスクリーンセーバーを見せたりする。これだけ。
これだけで自立的傾向が高まったそうだ。
マジですかい?と誰もが思うだろう。
私は思いました。マジですかい?

ちなみに、スクリーンセーバーの画像は、Science誌のウェブページで誰でも見ることができる。

じゃあ、どうやって自立的傾向が高まったことを調べたか?
これもいろいろやっているのだが、例えば、すごく難しいパズル(あるいは絶対に解けないパズル)を被験者にやらせる。
このとき実験者が、「もし助けが必要ならいつでも呼んでください」と声をかけておく。
そうすると、お金概念を思い出させられなかった被験者は、平均186秒で実験者に助けを求めた。
これに対して、お金概念を思い出させられた被験者は、なかなか助けを求めようとしない。平均で314秒経過したときに、初めて助けを求めたという。これは、問題を自力で解決しようという傾向が高まったからだ、と解釈できる。

この自立的傾向は、他人との関係にも影響する。
自力で解決すべきだ、という価値観を他人にも当てはめるので、何か困っている人がいても、助けようという気があまり起こらなくなる。
実験では例えば、被験者の目の前で、実験者が箱に入った鉛筆をぶちまける(演技をする)。
このとき、被験者が何本の鉛筆を拾ってあげたかを数えると、お金概念を思い出させられた被験者は、そうでない被験者に比べ、拾ってあげる本数が少なかったのだそうだ。

ということは…

例えば、ある大学教員が指導する一人の学生セヤマ君(仮名)が、「よくわからないので教えてください」、「うまくできないので助けてください」、「次はどんな論文を読んだらいいですか?」などとやたら他力本願な人間だったとする。
ここで、セヤマ君の使っているパソコンのスクリーンセーバーに、お金の画像が流れるようなものを使わせたり、机の片隅に千円札を貼り付けておいて、いつでも彼の視野内にお金が見えているようにすると、自立的傾向が高まり、少しは自分で問題を解決できるようになるかもしれない。
ただしその反面、「明日は学会のシンポジウムがあるので準備を手伝ってくれんかね?」とセヤマ君にお願いしても、あまり積極的に力を貸してくれなくなる可能性もある。

Vohs, K. D., Mead, N. L., & Goode, M. R. (2006). The psychological consequences of money. Science, 314, 1154-1156.

さて、
Science誌に掲載されるほどすごい実験じゃないかもしれませんが、私も心理学実験をやっています。しかも、ウェブページ上で参加できます。
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