なんで平均顔は美人なのか?

別の記事で、平均顔がそこそこの美男美女になることを紹介した。
目の大きさ、両目の間の間隔、口の大きさ、肌の色など、顔の視覚的特徴を平均化した顔は、いわば典型的な顔である。そういった平均顔=典型的な顔は、十人並みの普通の魅力を備えた顔ではなく、かなりの美男美女となる。多くの観察者が、平均顔を美男美女と判断する。
これは事実。
じゃあ、なんで平均顔が魅力的に感じられてしまうのか?
これについて有名な説明は、平均顔=典型的な顔は、繁殖のためのパートナーとして優秀な個体であることを示しているから(そういう相手とセックスして子供を作りたくなる?)、というものである。人間も動物の一種であると考えて、心理的現象を解明しようという立場からの説明である。
ところが、この説明にとってちょっとこまった事実が。
平均顔だけでなく、
平均魚
平均鳥
平均犬
平均車
平均時計
これらのどれもが、平均化する元になった個々の事例よりも、魅力的に感じられることがわかってしまったのである。
平均時計が魅力的に感じられたとしても、我々は時計をパートナーとして繁殖しようとは思わないから(一部の特殊な趣味の方(^^; はどうか知りませんが)、繁殖相手として優秀かどうか、に基づいた説明は適用できない。
Winkielmanたちは、もうちょっと一般的な原理で、平均顔や平均魚、平均時計などが魅力的に感じられる理由を説明しようとしている。
その説明とは、平均顔(や平均魚、平均時計)は、それ以外の顔に比べて心的情報処理が効率的に(fluently)行えるから、魅力的に感じられるんだ、というもの。
平均化した事物(顔、魚、時計、etc)は、その事物が属するカテゴリーでの典型的な属性を備えていると言える。そして、典型的な事物は、そうでない事物に比べ、心的情報処理が効率的に行ことが知られている。要するに、なんか判断をするときに、素早く判断できたり、間違いを犯さずに正確に判断ができたりするということである。例えば、典型的なスズメを見ると、すばやく「スズメだ!」と判断できるが、なんか変なスズメ(非典型的なスズメ)だと、スズメかどうかを判断するときにちょっと躊躇してしまったり、あるいは別の種類の鳥だと誤解してしまったりする、ということである。
そして、ある対象の心的情報処理が効率的に行えると、我々はそのような対象に好意的な反応を示すことも知られている。
ということから、典型的な事物に対しては、心的情報処理を効率的に行うことができて、効率的に行えるがゆえに、我々はそのような対象を魅力的に感じる、ということ。
なぜ効率的に処理できる対象を魅力的に感じるのか、という点に関しても、論文の中でちょっとだけ考察が述べられていたが、何を言っているのかよくわからなかったのでここはパス(学者の読解力なんてそんなもんだ。私だけか?)。
さて、処理の効率性に基づくこのような説明では、繁殖相手としての優秀さは全然問題とならないので、異性の顔だけでなく、魚でも鳥でも車でも時計でも、どんなものにでも同じ説明を適用できる。
魅力を評価する対象の種類によって、違う原理で魅力度が決まっている、ということでも良いような気がするんですがだめですかそうですか。
Winkielmanらの説明が正しいとすると、顔、魚、時計といった意味のある対象ではなく、黒い点がいくつか散らばったような、無意味なパターンについても、典型的なパターン=心的情報処理が効率的に行える=魅力的、ということになるはずである。
で、実験をやってみた、っちゅー話ですよ。
はい、こっから文体変わりますよ。
* *
* *
*
*
* *
はい、これがAckの原型です。
***
* *
*
* *
で、これがBlubの原型です。
という感じで、適当にドットパターン2種類(AckとBlub、なにそれ?)の原型を作ります。
で、それぞれのドットの位置ををほんのちょっとだけ動かすと、原型とは違ってしまうものの、依然として典型的なAckだったりBlubであったりしますよね。
じゃあ、すごくたくさんドットを動かすと、今度はかなり非典型的なAckやBlubができあがります。この実験では、ドットを動かす量(歪みの量)を4段階用意して、かなり典型的なパターンから、かなり非典型的なパターンまで、たくさん準備しておきました。
第一段階:学習
実験に参加した被験者のみなさんに、典型的なのから非典型的なのまで含めて、AckとBlubをたくさん見て貰います。それぞれのパターンには、Ack、Blubと書いてあって、被験者さんは、どんなのがAckで、どんなのがBlubかを覚えて(学習して)もらいます。
第二段階:魅力評定
次に、被験者さんたちにAckとBlubを一つずつ見せていって、その魅力を10段階で評価して貰います。全然魅力的じゃなかったら1点、すごく魅力的だったら10点、みたいな感じで。
しかし、ドットパターンの魅力って一体…
まあ、「ドットパターンの魅力を判断してください」というように被験者さんにお願いしたときに判断される「何か」を測定していたっちゅーことですな。
第三段階:分類課題
最後に、AckとBlubが一つずつ被験者さんに呈示されて、その都度被験者さんは、できるだけ素早く、それがAckなのかBlubなのかを識別します。AckかBlubかに応じてボタンを押して貰ったんですな。で、そのときの識別判断の素早さ(反応時間)を測定します。
結果
被験者が10点満点で何点つけたかを見ることで、それぞれのドットパターンの魅力度がわかります。そしたら、AckもBlubも、原型によく似たもの、つまり典型的なパターンほど魅力的だと判断したことがわかりました。典型的なパターンっていうのは、顔の場合だったら平均顔ということになります。
で、反応時間のデータを見ると、典型的なパターンであるほど、素早くAckかBlubかを識別できていたことがわかりました。パターンに対する処理が、典型的なものほど効率的に行われていたってことですね。
というわけで、
典型的なパターン→効率的に処理される→だから魅力的
という、Winkielmanらの仮説と矛盾しない結果が得られたことになりますよ、と。
でもどうなんすかね?
ドットパターンの「魅力」ですよ。
この「魅力」ってやつが、異性の顔を見たときに我々が感じる「魅力」と同じものなのか、どうなのか、ってのが次に検討すべきテーマなんですかね?
Winkielman, P., Halberstadt, J., Fazendeiro, T., & Catty, S. (2006). Prototypes are attractive because they are easy on the mind. Psychological Science, 17(9), 799-806.
[おねがい]
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