2006/12/27

顔の判断の個人差

fig2


私は顔の知覚・認知に関心があるところの一人の実験心理学者で、インターネット上で実験データを集めています。
実験に参加してくださった被験者さんのデータを分析していると、かなりの個人差があることに気づきます。多くの場合、個人差は「誤差」のように扱われて、被験者全体に共通している性質を見出すことに研究上の努力の大半が費やされます。

しかし、個人差そのものが研究対象となる場合もあります。そのような個人差の極端なものとして、相貌失認(prosopagnosia)を挙げることが出来ます。
相貌失認を「個人差」と呼ぶのは適切ではないかもしれませんが、顔と顔の違いを判断するのが非常に難しい(あるいは不可能)という人たちがいて、そのような「症例」のことを言います。

顔を見て、笑っているか怒っているか、といった様な表情の違いは普通に判断できるし、若者かお年寄りかの違いとか、美人かどうか、といいったことも分かるけれど、見ている顔が誰の顔なのかを判断することが非常に難しい、などといった具合です。
道で誰かとすれ違うときに、その人が知り合いの人なのか、ぜんぜん知らない人なのかが、(最終的には分かるんだけど)直ぐには判断がつかなかったりするそうです。
すれ違った相手が知り合いだったとすると、すごく無愛想なやつだ、と思われてしまうでしょうね。そのため、相貌失認の人は、できるだけ外出しないようにするなど、人との接触を回避するような傾向も見られるそうです。

さて、この相貌失認、よく紹介されるのは、病気や事故などで、脳に損傷を受けた結果として生じる後天的な症例です。
これに対し、先天的な(生まれつきの)相貌失認というのもあるそうですが、これまでは、非常に希な例だとされてきたそうです。
ところが、Kennerknechtらの研究によると、先天的な相貌失認の人の割合は、低めに見積もっても、2%くらいの割合でいるんじゃないか、ということです。
2%っていったら、50人に1人ってことですが…本当?
そんなに大勢いたら、普通気がつきそうなもんですが、Kennerknechtらは、先天的相貌失認の人たちは、顔以外の手がかりから人物を特定するスキルを、生まれてからずっと鍛えてきているので、日常生活に支障がないため、周囲の人間から見ても相貌失認であることに気づかないし、自分自身もそうであると気づかないんだ、みたいな感じの説明をしています。

これを読んでいる人の中にも、「もしかしたら自分もそうかも」と、うちあたいしている人がいるかもしれませんね。
そういう人も、そうでない人も、アメリカとイギリスの大学が共同でやっている、ウェブ上の相貌失認テスト(みたいなもの)を、ゲーム感覚でやってみてはどうでしょうか?
リンク先ですぐに試すことが出来ます。以前私がやってみたときよりもテストの数が増えていますが、とりあえず簡単にできるのは、OLD-NEW FACES TESTってやつですかね。説明文が英語ですので、英語がすごく苦手だけどどうしてもこのテストをやってみたい、という人がいたら、大ざっぱに訳してもいいです(勝手にそんなことしていいのかな?)。

ところで、
私と共同研究者たちで、相貌失認じゃないですが、顔の判断に関する個人差の研究を進めています。まだ論文にして正式に発表する前の段階ですから、詳しいことは言えませんが、人間の顔と人形の顔の識別を数百名の人にやってもらいました。そんなもん、個人差なんてあるわけないだろう、と思われるかもしれませんが、人によって結構違いが出てきます(ただし、実験で使った顔の画像は、特殊な物です)。相貌失認のような、ものすごい個人差ではありませんでしたが、もうちょっとしたら、結果を公表したいと思っています。
もし、これを読んでいるあなたが、人間と人形の顔の区別が難しい、人とは違う基準で判断しているかもしれない、などと感じていて、しかも私たちの研究に協力しても構わない、ということであれば、是非とも申し出てください。

なんて、こんなアクセス数の少ないブログで書いてもなあ。

Kennerknecht, I., Grueter, T., Welling, B., Wentzek, S., Horst, J., Edwards, S., et al. (2006). First report of prevalence of non-syndromic hereditary prosopagnosia (HPA). American Journal of Medical Genetics Part A.


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≪ 小畔川でGPSホームホローフェイス錯視を実際に体験してみる(2) ≫

Comment

はじめまして

興味深くブログを読ませていただきました。
相貌失認の研究をなさっているのですね。
わたしも顔の見分けはかなり下手ですが
それ以外にもいろいろ日常生活に
不都合なことをたくさん持っています。
相貌失認のテストはやってみたいのですが
英語がわからないのでよかったら翻訳をお願いしたいのですが、
どうぞよろしくお願いします。

Re: はじめまして

私は相貌失認の研究をしているわけではありません。

リンク先のページ(http://www.faceblind.org/facetests/index.php)は、ときどき内容が変わっているようですが、私が言っているテストはOnline Cambridge Face Memory Testです。
太字で書いてある「Online Cambridge Face Memory Test」の部分をクリックすると、テストの内容の説明を書いたページに移動します。以下、超訳です。
「このテストは、顔を認識する能力を調べることによって、顔認識能力に問題があるかどうかを調べるためのものです。ただし、テストの成績が悪かったからと言って、顔認識に問題があるとは言い切れないし、成績が良かったからと言って問題がないとも言い切れません。顔の記憶能力に関する一つの指標が得られるにすぎません。
テストを実施する際にはjavascriptが使えるようにしておいてください。
また、ブラウザのウィンドウをめいっぱい広げておいてください。
テストには20分ほどを要します。周りが静かなときに行ってください。
テストは途中で休憩を入れたりせずに、最後まで続けて行う必要があります。
また、メモを取ったりせず、自分の記憶だけで勝負してください。」

次のNameの欄には自分の名前、Emailにメールアドレス、Ageに年齢、Gender(M/F)には性別(男ならM、女ならF)を記入。
Locationは、あなたがいま日本にいるならOtherを選択です。

次にある設問は、「身の回りの人に比べて、自分の顔認識能力はどの程度良い(悪い)と思いますか」、というもので、5つの選択肢は左から、平均よりかなり悪い、平均よりちょっと悪い、平均的、平均よりちょっと良い、平均よりかなり良い、となっています。該当するラジオボタンをクリックしてください。

次の設問は、このテストを実施している研究者から、後々メール等でコンタクトをとらせてもらってよいか、という物です。Yes, Noを選んでください。

次の設問は、このテストに参加するのが今回初めてかどうかを問うています。Yes, Noを選んでください。始めてですよね。

最後に書いてあることを超訳すると、
「このテストは途中で嫌になったら好きなときにやめてもらってかまいません(データはとれませんが)。得られたデータは、研究のためだけに用いられます。もしよろしかったらご協力ください。」
とあり、テストに参加するなら「I agree! Let's start!」をクリックします。

ページが変わって、Cambridge Memory Test for Facesうんぬん、と表示されます。
スペースバーを押すとテストが始まります。

画面が変わって、Practice(練習)とあります。
三つの顔を記憶するのだそうです。
スペースバーを押すと始まります。

三つの顔が自動的に順に表示されていきます。
全部が表示されると、ページが変わって、異なる三つの顔が横並びに表示されます。
この中から、さっき見たのと同じ顔を選ぶことが求められています。
顔の下に1,2,3と数字が書いてありますので、キーボードを使って該当する数字キーを押します。
数字キーを押すと次の問題が表示されます。全部で3問あります。

3問回答すると、「よくできました」とかなんとか書いてある画面になり、次から本番に入るとあります。今度は6名の人の顔を覚えるのだそうです。
スペースバーを押すと、最初の人の顔が表示されます。
練習問題と同様に、同じ人の顔を異なる方向から見た画像が3回表示されます。
その後、問題が3問表示されるので、練習と同じく数字で回答してください。

あとは同じ事の繰り返しです。画面にPress the space barと表示されたらスペースバーを押す。顔が3回表示されるので覚える。問題が3問出されるので数字で答える。です。

6名分の顔が全部表示されると、今度は6名の正面向きの顔がいっぺんに画面に表示されます。20秒間顔をよく見て覚えてください。

Press the space barと表示されていたらスペースバーを押しましょう。
また問題が表示されます。
最初と同じように三つの顔が並んで表示され、そのうちの一人は、さっき見た6名のうちの誰かです。その人の顔を数字キーで選んでください。

いくつかの問題に答えると、また6つの顔がいっぺんに表示されます。20秒間よく見て顔を覚えてください。
20秒経つとまた問題が表示されます。手順は同じです。

しばらく問題に解答すると、成績が画面に表示されます。
以下は私の成績です。

Out of 72 faces, you correctly identified 60.
In other words, you got 83% correct.

72の顔のうち、60の顔を正しく同定できたとあります。これは正答率83%ということです。

その下には、
「以前に収集したーデータを分析すると、平均的な人でだいたい正答率80%前後でした。もし、正答率が65%以下だったら、顔認識に問題があるのかもしれません。」
とあります。

最後に、doneとあるボタンをクリックして終わりです。なぜかエラーが出ましたけど。

以上、大雑把に説明いたしましたが、もし分からないところがありましたらお尋ねください。

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